伝統技法『注染』について

注染(ちゅうせん)とは、明治時代から続く日本の染色技法の一つで主に手ぬぐいや浴衣に使われます。

生地の染めない部分に型紙で糊をつけて、染める部分に土手を作り、その土手の内側に染料を注いで布を染めます。
一度に多色を使って染めることができることが特徴です。

染料は布の下側まで抜けるため、布の芯まで染まり、裏表がなく柄が鮮やかで色褪せしにくい仕上がりになります。


近年多くなったプリントの手ぬぐいは、シルクスクリーンという型を使用してプリントするため細かいデザインまでしっかり表現できる反面、生地にペンキを塗るようなイメージで加工するため、表面のデザインが多少裏面に透ける事はありますが、裏面まできれいに発色しません。

注染は、顔料のインクを使わない上に、最後の工程で水洗いをするため、全体的に色が入ったデザインでも、プリント手ぬぐいのように生地の表面が固くならず、使えば使うほど生地は柔らかくなり肌に馴染んでいきます。

注染の工程

白生地

主に小巾綿織物(約34cmから38cmの巾)が使われています。
標準的な生地として「総理」「岡」「特岡」などがあります。

練地(ねりじ)

生地の歪みを取り染めやすくするために、お湯に数時間浸します。

生地干し

天気のいい日にやぐらで自然乾燥をします。

生地巻き

生地を巻き取りで丸巻きにします。
巻きながら布目をまっすぐにし、ゴミなどの付着物をチェックします。

糊調合

生地や染料の種類、柄の細かさに応じた硬さとなるように、糊の中に水や石灰を加え調合します。糊はもち米から作ります。

型付け

型紙を鉄のびょうで木枠に張り、型台の上に延ばした白生地の上にヘラで防染糊を付けます。
屏風上に生地を折り返し手拭で約20枚から40枚分の型付けを重ねていきます。

染料調合

指定の色が出るよう、染料の調合をします。
硫化染料、反応染料、ナフトール染料、スレン染料などが使われます。

染色

型付けされた生地を注染台に移動し、薬缶(やかん)を使って、染料を注ぎ、下から減圧して吸い取ります。
片面が終わったらひっくり返して裏側からも染めます。

水洗い

水洗機を使って、布地から防染糊や余分な染料を洗い落とします。

乾燥

水洗機が終わったら、脱水機に掛けてからやぐらに生地を干して手拭いを乾かします。

仕上げ

乾いた手拭いの生地を、再度地巻きして、手拭いの長さにたたみなおして、ロール機を通してシワを取ります。

完成

いくつもの工程を経て、染め上がる日本の伝統手ぬぐい。
熟練の職人が一枚一枚手作業で染め上げる逸品を是非手にとってその良さを実感してみてください。